FOILセイルのバテン知識 【基礎編】

[ レポート:J52岩崎 ]

FINセイルでは、FIN用ボードの着水面積が広いため(抵抗が大きいため)、セイルにパワーとしなやかさが、おおく求められます。具体的なケースをあげると、プレーニングに入るまでの走り出しや、凹凸が激しいラフ海面、ジャイブ、ブローホールなどでの失速時でのパンチングです。

FINボードで、プレーニングし高速域に入るためには、ボードに張り付く水を引き剥がすだけのセイルパワーと、FINパワーが必要になります。そのためセイル(マスト、バテン)やFINには初速時(低速時)のパワーと、海面のギャップを拾いながらも、海面の凹凸に同調して、瞬時に反応するしなやかさが求められます。

半面、高速域になると70km/hを超えてもライダーが安心してTOPスピードに移行できるような硬さ(安定性)も求められます。

当然、柔らいと一見パワーを得やすいように見えますが、実際にはセイルが曲がる、よじれる、動くことにより、直進する抵抗になるうえに、同時にアンコントロールに陥りやすくなると言うことです。しかし硬すぎても、しなやかさが失われるためパワーが得られずらくなり、さらに海面の凹凸に同調できないため、こちらもアンコントロールに陥りやすくなります。

この相反する性能を追求するために(イメージ的には、瞬時にオートマチックに反応するスポーツカーのサスペンションのような働き)高品質のカーボンが、マストやブーム、バテンに採用されている理由です。(詳しくは「バテンの基礎編、中級編」を参照ください)

本題のFOILセイルの前に、FOILボードについて、少し説明します。

FOILボードとFOILセイルについて

FOILボードには、FINより遥かに巨大な揚力を発生するFOILが装着されておりFOILボードのテイルは、ライダーの脚力がFOILに効率的に伝わるように幅広く(テコの原理)さらに深いステップがデザインされています。そのため走り出すとボードの下にすぐに風が流れ込み(上昇気流が発生)、FOILの揚力と相まって、低速からフライトに移行していきます。

本題のFOILセイルは、どうか?というとFOILセイルには、FINセイルに要求される程の大きなセイルパワーと、しなやかさは不要です。

セイルパワーは、前記したように、巨大な揚力を発生するFOILとFOILボードが、フライトするために必要なパワーを補ってくれます。例えば同じ太さ、同じ硬さの鉄棒の場合、長さ1Cmなら人力では曲がらなくても、1mあれば腕力で曲がります、さらに10mも長くなれば、支えている個所から、自重で曲がってしまう原理です。

またFOILボードが浮いてしまえば、接水面積が少なくなり、海面の凹凸で失速するリスク(抵抗が増えるリスク)が、極端に少なくなるため、セイルにスムーズに風が流れるように(乱流をおこさずに)する必要があります(乱流=ボードが上下動する)。そのためFOILセイルは、飛んだあとの高速安定性を重視しています。

高速安定性を上げるには、硬い翼が必要です。(飛行機の翼のイメージ)ボードスピードが上がるにつれ、抵抗となる進行風のなかに切れ込むような硬い翼です。

そこで重要となるパーツが硬い骨組み(バテン)です。

柔らかいバテンは、低速時は、しなってパワーを得られ易いように見えますが、高速になれば曲がり、そして歪んで動きだし、空気抵抗になり、セイルコントロールが難しくなります(オーバーセイルの原理)。

FOILセイルは、常に浮いた状態(海面の抵抗を受けない状態)で、飛行するため、リジットでありながらも、瞬時に反応する高反発な翼のイメージが必要なのです。(FOILも、高反発の高品質なカーボン が限定販売されている同じ理由です。)

参考ですが、世界チャンピオンタイトルを獲り続けているFRA192:アントワン・アルボーは、過度のバテンテンションによるバテンポケットの数ミリの膨らみが65km/h以上のスピードになると、大きな抵抗になると話していました。(わずか数ミリのバテンポケットの膨らみが抵抗になると言っているわけです)

現状、市販のプロダクションセイルの多くは、開発費用やテストライダー費用、大量生産に伴う原材料費の増加、物流費などの問題もあり、市販して利益が十分に得られるような価格設定で、価格と品質の折り合いをとり市場に出されています。

半面、LIBERTY カスタムバテンに関しては、バテン単体の販売と世界トップレベルのINTERNATIONAL RIDER達からの的確なフィードバックデータが得られるため多くの開発費用のコストカットが可能になり、現時点で制作できる最高品質のカーボンを選定して、リリースすることが出来ています。

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